Mexico City ヒラルディ邸。光と色の静かなる協奏曲
そんなことはさておき、今回紹介するのは、そのCMにも登場したバラガン最期の建築、ヒラルディ邸である。
1976年竣工。当時、既に建築家として引退していたバラガンがだったが、広告代理店を経営していたパンチョ・ヒラルディ(Pancho Gilardi)とマルティン・ルケ(Martín Luque)の依頼で設計。バラガンの最期の作品となった。
彼によると、先述したヒラルディと彼のお父さんに依頼されたバラガンは、当初、引退していることもあり、このプロジェクトを断ったそう。当時、バラガン70代、ヒラルディ&ルケ20代。しかし、この家の中心にそびえる”ハカランダ”という紫の花の木にインスピレーションを感じて、この木を囲む家を作ろうと、引き受けたという。また、バラガンの自邸からここまで近かったことも大きな要因だったそう。
ハカランダ色とホワイト。シンプルなコントラストが、実に美しい。
爽やかなカラーリングで終わらないのが、バラガン。中庭の別の一角は、ビビッドなピンクの世界。おお、これぞ、バラガンピンク。思わず息を飲む。真っ直ぐ伸びるサボテンもカッコいい。
この中庭がヒラルディ邸の1つのハイライトだとすると、もう1つのハイライトが、ここだろう。↓
写真上:ツアーに急遽参加したこの家に住むワンコと戯れる息子。
アクオスのCMにも登場した、あまりにも有名な室内プール。青、赤、白というプリミティブな色、窓から差しこむ光、反射する水。時間によって、入る光の位置が変わり、プールの表情も変わっていく。バラガンは毎日朝から夜までここで作業し、その光の動きと水の反射までを考えて、この家を作り上げたという。
ここ(写真上)は、メキシコのアルテサニアが飾られた、リビングスペースの一角。モダンなデザインの一方で、こういったところに、メキシコを愛したバラガンらしさを感じる。
ヒラルディ邸の依頼を受ける際、バラガンは、”私の頭の中にまだ残っている、すべてのアイデアをここでやらせてほしい”、と言ったらしい。バラガンがやりたかったことをすべて詰め込んだヒラルディ邸。最高傑作と言われるのは、そのためだろう。
私の写真だけでは伝わらないことがいっぱいある。シティに来る予定があるなら、ぜひ訪れて、直に見て、感じてほしい。
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